物書き昭和堂

次回はぱっどさんの公募「もしもの世界」へのエントリー作品 『 下 天 』

いらっしゃいませ

お品書き


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当ブログは銀遊私人の妄想が生み出す、自作小説ブログです。
昭和っぽい、ミステリー、ホラー、サスペンス・・・のようなものでございます。
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昭和の面影が残る、ぶら小路商店街の面々が怪事件に取り組む
『ぶら小路商店街始末記』


 第一章『とぶらう』        マンションの一室に起こる奇怪な現象。
                    過去に起きた人体発火事件が原因なのか。(全20回)

 第二章『開かずの部屋』    旧家で10年間封印されていた部屋の開錠を依頼された韋駄天商会。
                    その部屋に何があるのか、はたして鍵は開くのか。(全6回)

     『ゑひもせす』      開かずの部屋の一品から、事件は思わぬ展開に。
                    それにはどのような秘密が。
                    ぶら小路の面々に危機が迫る。(全26回)

 第三章『祭囃子に誘われて』 真夏の夜のファンタジー。
                    不思議な少年の秘密は。(全4回)

 第四章『ふたたびの』      カヲルの夢に現れた三人の死霊と一人の生霊。
                    彼らの依頼、そして正体は。(全12回)
               
 第五章『蔵六の奇病』      日野日出志先生の名作マンガを紙芝居にしたおじいさんが失踪。
                     おじいさんはどこへ行ったのか。(全5回)
     『誰そ彼』          アッキーの言うようにおじいさんは画の中に逃げたのか。
                     子供たちの依頼でおじいさん探しが始まる。(全10回) 

 第六章『幽霊電車』        怪談ミステリー、いたずら記者の前に現れた電車は・・・。(全7回)

ドン・キホーテのように猪突猛進の私立探偵 蟷螂数馬の事件ファイル。
『蟷螂探偵社』


 第一章『獏』             同じ夢を見ていた7人、それが一人また一人がと葬られていく。
                      夢の秘密は、事件の行方は。(全11回)

 第二章『下天』            戦国時代から近未来に連なる時空サスペンスミステリー。
                      すべては『血』か?!(連載中)


『ショートショート・コレクション』
  

 『もしも●●●●が叫んだら』     パニックにご用心(笑)

 『えれじい』              悲しいお話をです。

 怪物『シャカーン』         相模湾に正体不明の怪物体が接近、非常事態発令!

 『評決』                ある殺人事件の裁判に呼ばれた裁判員を待ち受ける奇妙な運命。

 『美極虫』               ある人気テレビ番組に隠された驚きの真実。

 『空蝉』                公園で空蝉を拾い集める老人、はたして老人の思いとは。


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  1. 2008/07/20(日) 18:00:00|
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ぶら小路「とぶらう」 プロローグ

ぶら小路商店街始末記

第一章 とぶらう


プロローグ



まずは主要な登場人物や設定のご紹介。

その前に、ここに登場する人物、組織、地域その他は架空のもので、実際に存在するものとは何ら関わりがないことをお断りしておきます。

主人公、姓は草薙、名は薫、一応男性、以下カヲルと呼ぶことにする。
大学を出てもやりたいことが判らず、三十も間近というのにまだフリーター。
思い切って親元を飛び出したものの、落ち着いた先は駅3つしか離れていない、築50年は経とうかという沈滞(ワザとだよ!)マンション、『レジデンス ハットリ』。

そんなカヲルがアルバイトしているのが『便利屋 韋駄天商会』。
社長の名が大前 仁。
身長185cm、体重100kgを超えるスキンヘッドの偉丈夫。
通称を和尚。

韋駄天商会の店舗があるのが『ぶら小路商店街』。
なんで便利屋に店舗がいるのかって。
最近はゴミ処理の依頼などが多いらしい。
それも曰く付きの・・・。
で、料金を取って回収したものの中から、使えそうなもの、珍しいものを見栄え良くして並べて置く。
それで高めの値段を付けて、行って来いのダブルで儲けようという魂胆らしい。

ぶら小路の出典は『寿限無』なのか、ぶらり散歩道といった小洒落た名前だが実際は・・・。
戦後闇市が既成事実化して市場の形態になった、両側10店づつ程度のアーケード商店街。
20年ほどから、近所に大型スーパーやらディスカウントが相次いで出店。
肉屋、魚屋、八百屋・・・商店街の主役がひとつまたひとつと閉めていく中、客足も遠のいて行く。
空き店舗が半数を超え、家賃が下がると何やら怪しげな業種の店舗が増えてきた。
韋駄天商会もそのひとつだが、一応便利屋ということは伏せているので、店舗名は『くるくるリサイクル』という。
もっとも店の電話で『韋駄天商会です。』などと応対しているようじゃ、脇が甘すぎるが。

怪しげな店たちでも出てくれば、コアな客がついて、不思議と人が増えてくるものだ。
そのほかの店と配置は次のとおり。

ぶら小路商店街見取り図

 

それぞれの詳しい説明は、登場機会があった時に譲るとして、柴田興業だけは説明しておかねば。
柴田興業はアーケード内全店舗の大家にして、社長の柴田泰蔵は商店会長。
それからけちのシバッタこと柴田泰蔵がめずらしく無料開放している休憩所の中に、いつも陣取っている占い師がいる。
シバッタが唯一頭が上がらない、魔法使いのようなばあさんだが、暗示にかけているという噂もある。
みんなはジャネットと呼んでいるが、日本人にしか見えない。
あっ、それから大通りを挟んだ向かいにあるパチンコ屋が『銀次郎』。
店長はなかなか釘を開けてくれない渋ちんだが、マスコットガールの鮎美ちゃんはベビーフェースなのにグラマラスでしかもアッケラカン。
お尻をさわるとセクハラ示談金1000円を徴収されるが、その額が絶妙。
金持ちの爺さん共は、毎日嬉々として漱石を献上している次第で、副収入は相当なものらしい。
まあ紹介はこのぐらいにしておいて、そろそろ物語りにはいろうか。

さて、あの事件が起きる3月9日の朝が明けようとしている。 




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  1. 2008/07/20(日) 19:18:41|
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あれまげどん 会議 その1

この物語は実在のあらゆる人物、組織、地域等と
一切関係のない、架空のお話です。



  あれまげどん

            ---終わり無き悪夢---


              会  議


似本国、首都 東郷。

首相官邸、地下3階。

シェルター内の会議室。

出席者は、

内閣総理大臣 福畑 靖夫 。

法務大臣 烏丸 国夫。

財務大臣 温水 福二郎。

文部科学大臣 鳥海 喜三朗 。

厚生労働大臣 前園 与一 。

環境大臣 鴨田 一郎 。

防衛大臣 岩場 茂男 。

内閣官房長官 村松 孝信。

国家公安委員会委員長 出水 信吉。

そして政府関係機関の職員や研究員が数名。


官房長官の村松 孝信が会議の進行をはじめた。

「それではこれより関係閣僚会議を始めます。」

福畑 靖夫首相が右手を斜め上30度にあげてさえぎる。

「官房長官、ボクはなんの関係閣僚会議か聞いてないよ。
 だいいち何でシェルターの中でやるんだね。」

村松
「これは失礼しました。
 総理はお忙しいかと思い、私の判断で手配させていただきました。
 シェルター内で行う理由は後ほど。
 最近多発する若者による大量殺人、猟奇殺人に対応する関係閣僚会議です。」

福畑
「なあ〜んだ、そうかー。
 フフン、でもそんなのボクの内閣でやる必要があるのかね。
 別に今に始まったことじゃないだろう。
 民政党の尾沢くんなんか、やる気まんまんじゃないのかね。」

村松
「総理、そうでもないんですよ。
 事態は切迫しつつあるとともに、同時に突破口ともなりそうな事象が確認されました。
 詳しくは出水国家公安委員長から。」

出水
「この10年間に発生した、大量殺人、猟奇殺人の犯人に共通する因子がないか、
 厚生労働省にも協力していただき、徹底的に分析しました。
 それによると・・・。」

前園
「あっ、そこからは私が説明しましょう。」

出水
「なんだ、私が発言中だぞ。」

前園
「わたしだって、年金だ、後期高齢者医療保険だって忙しい中、無い時間を割いて動いたんだ。
 喋らせてください。」

口調こそ丁寧だが、否と言わせない断固たる決意を感じさせる言い様だった。
出水は両手の平をやや上にあげて、お手上げを表現し、不貞腐れる。

前園
「まずは犯人ひとりひとりを徹底的に調べ上げました。
 生い立ちから病歴、心理、血液、遺伝形質、DNAまで。」

福畑
「ちょっと、前園くん。
 それって人権侵害になるんじゃないのかね。
 ねえ、烏丸くん。」

烏丸
「いや、首相。
 守るべきは無辜の市民の人権であって、それに比べれば犯人の人権が多少毀損されようが仕方ない。
 だいいち私が法律に則って死刑を執行させても、死神だのなんのとほざくマスコミに媚びないでください。
 わたしはその時々で自分が正義と思うことを行っている。
 友達の友達がアレカイタだって隠すことは無い・・・。」

烏丸が興奮して、立ち上がって発言を続けようとしたので、
福畑が慌ててさえぎるように、

「あー、判った。
 その件は了解した。
 前園くん、続けて。」

前園
「えー、どこまで行きましたっけ。
 あっ、そうだ。
 それでそのデータを私どもの所管するすべての研究機関に送って、とにかく分析しろと。
 半年以内に絶対にやってくれと。
 そう言いました。
 そうしたところ、未来医学研究所から興味深い分析が上がってきたのです。
 未来医学研究所の主席研究員 御手洗 次男を紹介します。」




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  1. 2008/07/20(日) 23:29:52|
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ぶら小路「とぶらう」 訪う その1

ジジッ!
バシュッ。

「うっし、今日も目覚まし秒殺!」

カヲルは異常に寝起きがいい。
高血圧なのか、眠りが浅いのか。
昼食後、夕食後、深夜とこまめに睡眠をとるようだから、やはり眠りが浅いのだろう。
沖縄の長寿のおばあさんは1日寝て、1日起きる2日間サイクルだそうだ。
この男は1日に3サイクル入れているようなものだから、きっと長生きはしないだろう。

コーヒーとパンで簡単に朝食をとったあと、韋駄天のスタッフジャンパーを鷲掴みにして、歩いて5分の店に出勤する。
部屋は4階の403で当然のようにエレベーターはないから、1フロア2部屋ごとに設置されている階段を降りていく。
折り返しごとに最後の2、3段はジャンプして、忙しげに降りるのが習慣になっていた。
それというのも1階104の部屋がどうも苦手で、勢いをつけて外まで出たいからだった。

その部屋はカヲルが引っ越して来た時から空き部屋だったのだが、はじめから負のオーラを感じていた。
誰もがそれを感じるようで、この階段の利用者は定着率が悪い。
カヲルはまだ3年目だが、それでも2番目の古株になってしまった。
たまにオーナーが空気を入れ替えるために、ドアや窓を開け放しているのだが、知らないで通りかかると心臓に悪いようだ。
この日もそうで、室内にオーナーが見えたのだが、挨拶もせず通り抜けた。

まだ開店前の銀次郎の前を過ぎて、通りを小走りに渡り、ぶら小路に入ったのはまだ8時をわずかに過ぎた頃。
開いているのはまだクイックキッチンくらいのはずだが、入口のところに二人連れが佇んでいた。
40代の母親と二十歳前の娘と見える。
二人ともすらっとした美人で、清楚な身なりだが、着物を着せたら周囲の視線を釘付けにするに違いない。
カヲルはチラッチラッと視線をくべながら、奥の店に入って行った。

和尚はもう机について、コーヒーをすすっていた。

「社長、おはようございまーす。」カヲルはさすがに和尚とは呼べない。

「カヲル、お前も飲むか?」

「あざーす。それより社長、入り口のところの美人の二人連れ見ました?」

「いや、今二階から降りてきたところだ。」和尚は店の二階に住んでいた。

「入り口のところに母子って感じの、すげー美人の二人連れがいたんですよ。会長の店が開くのを待っていたのかな。」

「ふーん」

「何すか、その気のない返事は。社長まだ独身でしょ、もっと女性に興味をもってくださいよ。」

「バーカ、昔さんざん遊んだから、もう卒業だ。それより今日は外ねえから店開けるぞ。」

韋駄天商会として外回りの仕事がない時は、くるくるリサイクルの店番で交替で休んだりパチンコしたりするのが日課だった。

和尚は暇なときに溜め込んだ帳簿つけをするのが習慣だった。
「社長、暇っすね。ちょっと銀次郎行って来ていいですか?」
「あぁ、アユのケツなんか触って無駄な金使うんじゃねぇぞ。」
「判ってますよ、給料少ないから補填しに行くんすから。」
出掛けに柴田興業を横目で覗くと、あの親子がシバッタと向かい合って話し合っているのが見えた。
いかにも物件を探しているという感じだった。

銀次郎に入ると早速鮎美を見つけて声をかける。

「アユちゃん、エヴァ出てる?」

「ご覧の通り。」

20台はいっているエヴァ4シトフタは5割の客付きで、10時を回ったというのにまだ誰も初当りしていないようだ。

「店長にもっと釘開けろって言っといてよ。」

「自分で言えば。」

そう鮎美だから言えるのだし、言うのである。
店長に声を掛ける気はサラサラないカヲルだった。


『とぶらう』はじめから

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  1. 2008/07/21(月) 09:11:35|
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ぶら小路「とぶらう」 訪う その2

最近のカヲルのお気に入りはエヴァ4。
だけども投資は1台2000円までと決めていた。
初当りの8割くらいまでが、最初の2000円で引いていたと考えていたからだ。
実際、この日も1000円で暴走を呼び込み、今3連荘の最中である。
そんな時、携帯に社長からのコールが入る。

「急な仕事がはいった。お前のマンションだけど、水漏れだから工具持っていくからガレージに来い。」

「えっ、マジっすか?確変中なんすけど。」

「そんなもん、アユに任せてすぐ来い!」

「もぅ、ボロマンションめっ。」

ガレージに行くと和尚はもう韋駄天の軽トラに乗って待っていた。

「社長のガタイにこの車は窮屈っすよね。」

「狭いぐらいの方が落ち着くんだ。」

「ハットリだったら、ここに乗るくらいなら走ったほうがいいんすけど。」

「ガタガタ言わずにとりあえず乗っとけ。」

「店は?」

「ワンのやつまだ来てなかったから、クリちゃんに頼んで来た。」

ワンというのは隣のパソコンショップをやっている、自称ハッカーの台湾人だ。
お互い暇なときは店番を頼んだり頼まれたりするが、気儘にやっているので店が開かないこともままある。
クリちゃんとは向かいのクリーニング屋。
そこそこ繁盛して忙しいようだが、和尚に言われると風貌に圧倒されて断ることが出来ないようだ。

レジデンス ハットリに着くと現場はなんと104だった。
しかもシバッタ、そしてあの母子がいる。

「オレあの部屋、気が進まないんすけど。」

「何言ってんだ、工具箱持ってついて来い。」


「会長、どうしたんですか。」和尚が尋ねた。

「いやお客さんに部屋を見せていたら急に蛇口から水が出てきて止まらないんだよ。
 契約止めているから、そもそも水が出ないはずなんだけど。」

「おかしいですね、ちょっと見てみます。カヲル、元栓見て来い。」

「北島さん、すみませんねー。見苦しいところ見せちゃって。」とシバッタが母子に話かける。

「いいえ、いいんですよ。私たちはここの場所も、お家賃もとても気に入っていますの。
 今度私のお休みがとれるのが20日なので、その時もう一度見せてもらって契約をさせていただきたいと思います。」

「判りました。それでは一応ご予約ということで、それまでにしっかり直しておきます。」

「では、今日はこれで失礼いたします。」


カヲルが元栓に異常がないことを報告のためドアを開けようとしたところ、娘と鉢合わせしそうになった。

「あっ、すみません。」

「いいえ、ご苦労様です。」

高く澄んだ声にどぎまぎしながら、カヲルは体を壁に寄せた。

「僕、この4階に住んでいるんです。」

「あら、そうなんですか。ご近所になるかもしれませんね。」と微笑んだ。

「お待ちしています。」と言い、訳が判らなくなりながらもしっかり次の言葉が。

「お名前教えてもらっていいですか。」

ちょっと間をおいたあと。

「北島美津紀といいます。」

「みつきちゃんですか、草薙薫です。」

「よろしく。」

軽く会釈しながら美津紀は外に出て行き、母親も追いかけた。



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