物書き昭和堂

次回はぱっどさんの公募「もしもの世界」へのエントリー作品 『 下 天 』

ぶら小路「とぶらう」 プロローグ

ぶら小路商店街始末記

第一章 とぶらう


プロローグ



まずは主要な登場人物や設定のご紹介。

その前に、ここに登場する人物、組織、地域その他は架空のもので、実際に存在するものとは何ら関わりがないことをお断りしておきます。

主人公、姓は草薙、名は薫、一応男性、以下カヲルと呼ぶことにする。
大学を出てもやりたいことが判らず、三十も間近というのにまだフリーター。
思い切って親元を飛び出したものの、落ち着いた先は駅3つしか離れていない、築50年は経とうかという沈滞(ワザとだよ!)マンション、『レジデンス ハットリ』。

そんなカヲルがアルバイトしているのが『便利屋 韋駄天商会』。
社長の名が大前 仁。
身長185cm、体重100kgを超えるスキンヘッドの偉丈夫。
通称を和尚。

韋駄天商会の店舗があるのが『ぶら小路商店街』。
なんで便利屋に店舗がいるのかって。
最近はゴミ処理の依頼などが多いらしい。
それも曰く付きの・・・。
で、料金を取って回収したものの中から、使えそうなもの、珍しいものを見栄え良くして並べて置く。
それで高めの値段を付けて、行って来いのダブルで儲けようという魂胆らしい。

ぶら小路の出典は『寿限無』なのか、ぶらり散歩道といった小洒落た名前だが実際は・・・。
戦後闇市が既成事実化して市場の形態になった、両側10店づつ程度のアーケード商店街。
20年ほどから、近所に大型スーパーやらディスカウントが相次いで出店。
肉屋、魚屋、八百屋・・・商店街の主役がひとつまたひとつと閉めていく中、客足も遠のいて行く。
空き店舗が半数を超え、家賃が下がると何やら怪しげな業種の店舗が増えてきた。
韋駄天商会もそのひとつだが、一応便利屋ということは伏せているので、店舗名は『くるくるリサイクル』という。
もっとも店の電話で『韋駄天商会です。』などと応対しているようじゃ、脇が甘すぎるが。

怪しげな店たちでも出てくれば、コアな客がついて、不思議と人が増えてくるものだ。
そのほかの店と配置は次のとおり。

ぶら小路商店街見取り図

 

それぞれの詳しい説明は、登場機会があった時に譲るとして、柴田興業だけは説明しておかねば。
柴田興業はアーケード内全店舗の大家にして、社長の柴田泰蔵は商店会長。
それからけちのシバッタこと柴田泰蔵がめずらしく無料開放している休憩所の中に、いつも陣取っている占い師がいる。
シバッタが唯一頭が上がらない、魔法使いのようなばあさんだが、暗示にかけているという噂もある。
みんなはジャネットと呼んでいるが、日本人にしか見えない。
あっ、それから大通りを挟んだ向かいにあるパチンコ屋が『銀次郎』。
店長はなかなか釘を開けてくれない渋ちんだが、マスコットガールの鮎美ちゃんはベビーフェースなのにグラマラスでしかもアッケラカン。
お尻をさわるとセクハラ示談金1000円を徴収されるが、その額が絶妙。
金持ちの爺さん共は、毎日嬉々として漱石を献上している次第で、副収入は相当なものらしい。
まあ紹介はこのぐらいにしておいて、そろそろ物語りにはいろうか。

さて、あの事件が起きる3月9日の朝が明けようとしている。 




この節のつづき

お帰りになる前に、つづきが読みたいと思っていただけましたら、どれかひとつあなたのポチッを。

にほんブログ村 小説ブログ ミステリー・推理小説へ

カテゴリ別オンライン小説ランキング

人気ブログランキングへ
  1. 2008/07/20(日) 19:18:41|
  2. 小説『ぶら小路商店街始末記』|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:95

ぶら小路「とぶらう」 訪う その1

ジジッ!
バシュッ。

「うっし、今日も目覚まし秒殺!」

カヲルは異常に寝起きがいい。
高血圧なのか、眠りが浅いのか。
昼食後、夕食後、深夜とこまめに睡眠をとるようだから、やはり眠りが浅いのだろう。
沖縄の長寿のおばあさんは1日寝て、1日起きる2日間サイクルだそうだ。
この男は1日に3サイクル入れているようなものだから、きっと長生きはしないだろう。

コーヒーとパンで簡単に朝食をとったあと、韋駄天のスタッフジャンパーを鷲掴みにして、歩いて5分の店に出勤する。
部屋は4階の403で当然のようにエレベーターはないから、1フロア2部屋ごとに設置されている階段を降りていく。
折り返しごとに最後の2、3段はジャンプして、忙しげに降りるのが習慣になっていた。
それというのも1階104の部屋がどうも苦手で、勢いをつけて外まで出たいからだった。

その部屋はカヲルが引っ越して来た時から空き部屋だったのだが、はじめから負のオーラを感じていた。
誰もがそれを感じるようで、この階段の利用者は定着率が悪い。
カヲルはまだ3年目だが、それでも2番目の古株になってしまった。
たまにオーナーが空気を入れ替えるために、ドアや窓を開け放しているのだが、知らないで通りかかると心臓に悪いようだ。
この日もそうで、室内にオーナーが見えたのだが、挨拶もせず通り抜けた。

まだ開店前の銀次郎の前を過ぎて、通りを小走りに渡り、ぶら小路に入ったのはまだ8時をわずかに過ぎた頃。
開いているのはまだクイックキッチンくらいのはずだが、入口のところに二人連れが佇んでいた。
40代の母親と二十歳前の娘と見える。
二人ともすらっとした美人で、清楚な身なりだが、着物を着せたら周囲の視線を釘付けにするに違いない。
カヲルはチラッチラッと視線をくべながら、奥の店に入って行った。

和尚はもう机について、コーヒーをすすっていた。

「社長、おはようございまーす。」カヲルはさすがに和尚とは呼べない。

「カヲル、お前も飲むか?」

「あざーす。それより社長、入り口のところの美人の二人連れ見ました?」

「いや、今二階から降りてきたところだ。」和尚は店の二階に住んでいた。

「入り口のところに母子って感じの、すげー美人の二人連れがいたんですよ。会長の店が開くのを待っていたのかな。」

「ふーん」

「何すか、その気のない返事は。社長まだ独身でしょ、もっと女性に興味をもってくださいよ。」

「バーカ、昔さんざん遊んだから、もう卒業だ。それより今日は外ねえから店開けるぞ。」

韋駄天商会として外回りの仕事がない時は、くるくるリサイクルの店番で交替で休んだりパチンコしたりするのが日課だった。

和尚は暇なときに溜め込んだ帳簿つけをするのが習慣だった。
「社長、暇っすね。ちょっと銀次郎行って来ていいですか?」
「あぁ、アユのケツなんか触って無駄な金使うんじゃねぇぞ。」
「判ってますよ、給料少ないから補填しに行くんすから。」
出掛けに柴田興業を横目で覗くと、あの親子がシバッタと向かい合って話し合っているのが見えた。
いかにも物件を探しているという感じだった。

銀次郎に入ると早速鮎美を見つけて声をかける。

「アユちゃん、エヴァ出てる?」

「ご覧の通り。」

20台はいっているエヴァ4シトフタは5割の客付きで、10時を回ったというのにまだ誰も初当りしていないようだ。

「店長にもっと釘開けろって言っといてよ。」

「自分で言えば。」

そう鮎美だから言えるのだし、言うのである。
店長に声を掛ける気はサラサラないカヲルだった。


『とぶらう』はじめから

この節のつづき

お帰りになる前に、つづきが読みたいと思っていただけましたら、どれかひとつあなたのポチッを。

にほんブログ村 小説ブログ ミステリー・推理小説へ

カテゴリ別オンライン小説ランキング

人気ブログランキングへ
  1. 2008/07/21(月) 09:11:35|
  2. 小説『ぶら小路商店街始末記』|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:0

ぶら小路「とぶらう」 訪う その2

最近のカヲルのお気に入りはエヴァ4。
だけども投資は1台2000円までと決めていた。
初当りの8割くらいまでが、最初の2000円で引いていたと考えていたからだ。
実際、この日も1000円で暴走を呼び込み、今3連荘の最中である。
そんな時、携帯に社長からのコールが入る。

「急な仕事がはいった。お前のマンションだけど、水漏れだから工具持っていくからガレージに来い。」

「えっ、マジっすか?確変中なんすけど。」

「そんなもん、アユに任せてすぐ来い!」

「もぅ、ボロマンションめっ。」

ガレージに行くと和尚はもう韋駄天の軽トラに乗って待っていた。

「社長のガタイにこの車は窮屈っすよね。」

「狭いぐらいの方が落ち着くんだ。」

「ハットリだったら、ここに乗るくらいなら走ったほうがいいんすけど。」

「ガタガタ言わずにとりあえず乗っとけ。」

「店は?」

「ワンのやつまだ来てなかったから、クリちゃんに頼んで来た。」

ワンというのは隣のパソコンショップをやっている、自称ハッカーの台湾人だ。
お互い暇なときは店番を頼んだり頼まれたりするが、気儘にやっているので店が開かないこともままある。
クリちゃんとは向かいのクリーニング屋。
そこそこ繁盛して忙しいようだが、和尚に言われると風貌に圧倒されて断ることが出来ないようだ。

レジデンス ハットリに着くと現場はなんと104だった。
しかもシバッタ、そしてあの母子がいる。

「オレあの部屋、気が進まないんすけど。」

「何言ってんだ、工具箱持ってついて来い。」


「会長、どうしたんですか。」和尚が尋ねた。

「いやお客さんに部屋を見せていたら急に蛇口から水が出てきて止まらないんだよ。
 契約止めているから、そもそも水が出ないはずなんだけど。」

「おかしいですね、ちょっと見てみます。カヲル、元栓見て来い。」

「北島さん、すみませんねー。見苦しいところ見せちゃって。」とシバッタが母子に話かける。

「いいえ、いいんですよ。私たちはここの場所も、お家賃もとても気に入っていますの。
 今度私のお休みがとれるのが20日なので、その時もう一度見せてもらって契約をさせていただきたいと思います。」

「判りました。それでは一応ご予約ということで、それまでにしっかり直しておきます。」

「では、今日はこれで失礼いたします。」


カヲルが元栓に異常がないことを報告のためドアを開けようとしたところ、娘と鉢合わせしそうになった。

「あっ、すみません。」

「いいえ、ご苦労様です。」

高く澄んだ声にどぎまぎしながら、カヲルは体を壁に寄せた。

「僕、この4階に住んでいるんです。」

「あら、そうなんですか。ご近所になるかもしれませんね。」と微笑んだ。

「お待ちしています。」と言い、訳が判らなくなりながらもしっかり次の言葉が。

「お名前教えてもらっていいですか。」

ちょっと間をおいたあと。

「北島美津紀といいます。」

「みつきちゃんですか、草薙薫です。」

「よろしく。」

軽く会釈しながら美津紀は外に出て行き、母親も追いかけた。



『とぶらう』はじめから

これの前の節

この節のつづき

お帰りになる前に、つづきが読みたいと思っていただけましたら、どれかひとつあなたのポチッを。

にほんブログ村 小説ブログ ミステリー・推理小説へ

カテゴリ別オンライン小説ランキング

人気ブログランキングへ
  1. 2008/07/22(火) 00:07:33|
  2. 小説『ぶら小路商店街始末記』|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:4

ぶら小路「とぶらう」 訪う その3

「じゃ駅まで送っていくから、これカギ。
 終わったら閉めて店に持ってきてくれよ、和尚。」

とシバッタが母子を追う。

「了解。」


「あれっ、社長。水止まってるじゃないすか。」

和尚が振り返ると確かに水は出ていない。

「おかしいな特別何もしてないんだが。」

「まっいいじゃないすか。終わり終わり。エヴァもそのままとってあるかもしんないし。」

「うーん、水道局に連絡して、ちょっと様子をみるか。」

道具を軽トラに積み込んで帰ろうとした時。
カヲルは凍りつき声が出なかった。
視線は104の窓に向かって釘付けになり、左手はそちらを指差し、右手は和尚の肩をたたいている。

「どうした?」

「・・・・・」

やっとのこと、声を絞り出す。

「今・・・窓際に・・・黒い影が立っていて・・・奥に引っ込んでいった・・・」

和尚はカヲルの顔と窓を交互に2回見ると、やおら車を降り104に戻って行った。


時間にして5分程度だろうか。
しかしカヲルは、こんなに長く心許ない5分ははじめてだった。
和尚が出てきて軽トラのドアを開けると、

「別に何もなかった。」

「じゃお化けっすか?」

「さあ、判らんな。だけどお前が何か見たことは信じるよ、それが錯覚としても。」

やっぱり和尚は男気がある・・・とカヲルは思った。

「あの母子、引っ越して来たら危なくないすか。」

「この部屋は前から噂はちょくちょく耳にするからな。」

「社長、除霊してくださいよ。元坊さんでしょ。」

「バカッ、そんな力があったら便利屋なんかやってねえ。
 だけどちょっと調べてみるか。まずはオーナーだな。」

「オーナーひとり者だから、夜は楓で飲んでいるようですよ。」

楓は近所の小料理屋だ。

「じゃ、ひとり者同士、怪談話を肴に一杯やってくるか。」

「お願いします。俺も恐くておちおち住んじゃいられないから。」



夜、カヲルは連れて行ってもらえなかった。
二人の方が話しやすいと和尚が言うのだ。
午前2時を回り、和尚とオーナーの話を気に掛けながらも床についた。
繁華街に近いとは言え、さすがにこの時間になると人通りが途絶え、静寂に包まれる。
しばらくすると・・・
コーン、コーンとパイプが振動するような音。
ガー、ガフォと圧力が漏れるような音もまざっている。

「やべ〜〜〜、また水道かよ〜。」

もう涙が出そうだった。

「夢なら覚めてくれ〜。」

声にならない声だった。


続いたのは10分くらいなのだろうが、結局朝まで眠れなかった。


カヲルがくるくるに出勤すると、昨日と同じように和尚が椅子に座っていた。

「社長、どうでした。」

「それがよー、結構口が堅いんだ。
 噂が再燃すると入居しなかったり、出て行くのもいるだろうから警戒してるんだな。」

「じゃーどうするんですか。」

「別に俺がどうこうする義理はないんだが、ちょっと種を撒いて置いた。
 2、3日様子を見てみよう。」

「判りました、でも早くしてくださいよ。夕べも変な音がしてたんだから。」

「そうか、まあよく観察して、みんなに喋っておけ。」

「えっ、喋っちゃっていいんすか。」

「何とかしたいんだろ。」

「はい・・・。」



その後も人影を見たという話や、変な音やうめくような声まで聞いたという人が出てきて、
レジデンス ハットリの周りではひそひそ話が絶えなくなってきた。
カヲルもほとんど眠れずに、ずっとヘッドフォンでDVDを見ていた。


3日後の13日、今度はオーナーから電話が掛かってきた。

「大前さん、もう一度楓でお話したいんだけど。」

「判りました、じゃ8時に楓で。」

電話を切ると、

「カヲル、夜出掛けてくるから、何なら俺の部屋で寝てていいぞ。」

「助かります、甘えます。」

ハットリに戻るのも恐いが、それよりも話の内容を早く聞きたいという気持ちがあったからだ。



『とぶらう』はじめから

これの前の節

この節のつづき

お帰りになる前に、つづきが読みたいと思っていただけましたら、どれかひとつあなたのポチッを。

にほんブログ村 小説ブログ ミステリー・推理小説へ

カテゴリ別オンライン小説ランキング

人気ブログランキングへ
  1. 2008/07/22(火) 13:16:36|
  2. 小説『ぶら小路商店街始末記』|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:0

ぶら小路「とぶらう」 訪う その4

カヲルの目が覚めたのは午前10時、アーケードの中にある保育所の子供たちの声でだった。
4日ぶりのまともな睡眠で、カヲルにとってはめずらしく寝過ごしたようだ。

「やっべー、社長どうしたんだろ。まだ帰ってないのかな。」

店の机の上に書置きがあった。

『2、3日出張に行って来る。イダテンの仕事は入れるな。』

「なんだよー、出張なんてリーマンじゃあるまいし、話聞きたかったのによー。
 だいいち書置きって・・・電話するなってことかー。俺はどうすりゃいいんだよー。」

自分で考えろと言われるのがオチだから、敢えて携帯には掛けなかった。
幸い店を開けろとも書いてないし、客が来るとも思えないので、とりあえず今日はパチンコでもしようと考えた。
店の冷蔵庫から缶コーヒーを取り出して、振りながらアーケードを銀次郎に向かって行くと、
休憩所にはもうジャネットが陣取って、タロットカードを並べていた。
カヲルは今まであまり声を掛けたことはなかったが、今の状況が心境の変化を起こさせた。

「ジャネットさん、ここ座っただけで1000円ですか。」

まん丸のクラッシックな眼鏡の奥の瞳がカヲルを見上げる。
年齢不詳、刻んだしわの割には端整な顔立ちで、昔は美人だったのだろう。

「その手に持ったものでいいよ。」

意外に気さくなのかもしれない。

「本当、良く振っといたから。」

「なんか見てほしい事でもあるのかい。」

「う〜ん、そうだな〜、お化けっているの。」

「あたしゃイタコじゃないんだからね。」

「でも、占い師って霊能者じゃないの。」

「占いはもっと科学的、統計的なもんだよ。」

「じゃ、その観点からお化けってどうよ。」

「幽霊も、物の怪も、神様も、そしてお前を含めて人間も、
 全部もとは同じものだよ。
 この星をテリトリーとする世界は物質と、精神というか心霊の2層構造なのさ。
 人間、おぎゃーと産まれてなんで好きだとか嫌いだとかっていう感情が顕れると思う。
 ヒトという器に心霊が宿るからさ。
 心霊の性格や感情がヒトという肉体で表現されるのさ。
 宿れないで彷徨っているのが幽霊だったり物の怪だったり、
 守護霊なんてのも他の心霊に執着しているようじゃ彷徨っているうちかな。
 神様っていうのは自ら宿るのを止めて、他の心霊をコントロールしてるのさ。
 そして人に宿った心霊は、普通は心霊界のものが見えなくなってしまうのだけども、
 宿った心霊が特殊な力を持っていたり、強い心霊だと見えることもあるし、
 逆に浮遊している心霊の力が強いと、普通の人に見えたりするのさ。
 たまにひとつの肉体に心霊がふたつもみっつもはいったり、
 途中で力の強い浮遊霊に乗っ取られたりしてややこしいことになるけどね。
 ・・・な〜んてあたしゃ考えているのさ。」

「へー、妙に説得力あるねー。
 でもさ、ヒトの器としての起源は進化論とかで説明できるとして、
 その心霊の起源っていうのはどうなるの。」

「突っ込んでくるのかい。
 パンスペルミア説っていうの知ってるかい。
 地球の生命は宇宙から飛来した胞子によって発生したという説さ。
 あたしゃ心霊こそ宇宙から箱舟で地球にやってきたと思っているのさ。
 じゃ、なんでその頃の記憶がないのかというと、まあバカなんだろうね。
 心霊はそれぞれの相対的関係と性向しか記憶してないんだろうよ。
 だから今お前さんが浮遊している心霊を見て何かの形と認識しても、
 それは相対的関係情報でヒトとしての記憶の中から、
 それにあてはまるものを投影しているってことさね。」

「は〜〜〜。」

「もういいかい。続き聞きたきゃ早く銀次郎へ行って、ビスケットの1箱でも取って来な。」

「ばれてた。はいはい、じゃ行って来るよ。」

「この話は、和尚にもしたばかりだよ。」

「えっ、社長といつ会ったの。」

「会ったも何も、夕べあたしが店じまいをしていたときに、
 強引に楓まで連れ出して、一芝居打たせたのさ。
 ありゃあ悪い男だねー。」

言葉とは真逆の感情を感じさせる話口だ。

「えっ、どんな芝居?」

「それはあたしからは言えないよ。まあ、お前さんは信じて待っていればいいんじゃない。」

振り出しに戻ったような感覚に囚われながら、カヲルは席を立った。




『とぶらう』はじめから

これの前の節

この節のつづき

お帰りになる前に、つづきが読みたいと思っていただけましたら、どれかひとつあなたのポチッを。

にほんブログ村 小説ブログ ミステリー・推理小説へ

カテゴリ別オンライン小説ランキング

人気ブログランキングへ
  1. 2008/07/23(水) 00:53:00|
  2. 小説『ぶら小路商店街始末記』|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:0
| HOME | NEXT…