プルルルルー、プルルルルー。
「はい、韋駄天商会です。」とカヲル。「はい・・・はい・・・。 社長ー、仕事ですよー。」
「替わろう。はい韋駄天商会 大前です。」
それから話すこと10分、受話器を置いた。
「社長、なんか複雑そうすね?」
「まっ、とりあえず行ってもう一度詳しく聞くことにした。ちょっとハタ坊引っ張って来い。」
「えっ、ハタ坊も連れて行くんすか?また変な仕事じゃないでしょーねー。」
ハタ坊は同じアーケードの中で模型店の店主をやっている。
片隅で合鍵屋もやっている器用な男だ。
「錠前開けの道具も持って来るように言ってくれ。」
強引に店を休まされるハタ坊も迷惑だが、アルバイトの方が実入りが多いだろう。
30分後。
韋駄天の軽トラは現場に向かっていた。
和尚(社長)が運転、ハタ坊は助手席、カヲルは・・・
「社長ー、今どき軽トラの荷台に乗るなんてありえないっすよー!警察見てたらどうするんすかー!!」
風圧に負けないようにカヲルが叫んでいる。
「しょーがねーじゃねーか、ハタ坊ひとりで良かったのに、お前がどうしても来たいって言うからだ!」
和尚も窓を半分開けて我鳴る。
「だってヤバイすよー!」
「あと10分くらいだ、床にへばりついて毛布被ってろ!」
「もう。。。。」
正確に10分後、車は生垣が数十メートルはあろうかという、たいそうなお屋敷の門の前に寄せられた。
大きくて年代を感じさせる松らしき木製表札に、これまたでかでかと漆黒の墨で『神津』とあった。
「すみません、韋駄天商会ですが。」インターホンで呼ぶと観音開きの鉄扉が電動で開いて、車を迎え入れた。
車をガレージの横に止め、3人は母屋の玄関に向かって歩いた。
「社長、すごいお屋敷ですねー。」カヲルは陽気だった。
「神津家と言やーここいらじゃ1、2を争う資産家で名士だからな。」和尚に浮ついた気配はない。
「和尚さん、何の依頼なんですか?金庫ですか?」ハタ坊はもっと不安そうだった。
「大丈夫だよ、この間みたいにヤ●ザのとこじゃないから。」
半年ほど前、ヤ●ザ屋さんの事務所の金庫を、プレッシャーを掛けられながら開けた時は生きた心地がしなかったハタ坊だった。
もっとも和尚のレスラー時代の知り合いだったみたいだから、そうあぶない状況ではなかったのだが。
「それに金庫でもないみたいだ。金庫ならもっと料金ふっかけられるのになー。」
家人が聞いてるかもしれないのに、声が大き過ぎるとカヲルとハタ坊は思った。
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- 2008/08/05(火) 12:52:21|
- 小説『ぶら小路商店街始末記』|
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